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 今は規模を追求するタイミングには無い。

 コロナ禍に伴うサプライチェーンの混乱、不安定な価格水準、不均衡な労働力といった問題は、コロナ禍自体の平準化とそれに伴うニューノーマルの浸透に至るまではまだまだその形を変えて顕在化し続けることが予想される。一方で、従前より挙げられていた地球温暖化への対処(含む温室効果ガスの削減あるいは固定化)、人口増大に伴う食糧問題、食の安全性の確保、等の懸念が引き続き通奏低音のように存在している。

 社会の持続可能性のためにSDGsとしてくくられる様々な新しい取り組みは、前者のコロナ禍関連の短期的な問題を織り込むというよりむしろうまく利用しつつ、後者の長期の大きな問題解決のために進められている。例えば、都市農業・垂直農業・植物工場などは、サプライチェーンの安定性を補完するという意味合いで改めて重要な分野と看做されており、また、小規模農家がITやバイオ技術を活用してどうやれば生産の効率化を図り、かつ、乱高下する市場に対して安定した販売量と金額を確保することができるか、に対するビジネス的な対応も試みられている。これは、なかなか機動的に動くことが難しい大規模生産者や、そもそもコントロールできない市場や相場に対して何か大きなアクションを取るよりも、不安定さが継続する今は、だからこそニッチな分野での準備をすることができる、ということであろう。来るニューノーマルにおいては、そういったニッチな取り組みこそが、気がついてみると産業の構造において必要不可欠な要素として定着するであろうことは、過去の様々な厄災とその後の事例においても散見されている。

 今回、流通における食物廃棄を削減するための方策について触れているものがあり、一つに農作物の収穫の前あるいは後に行う処理において、どうすればその後の品質を長持ちさせることができるかを記していた。その中には、事後的に農薬を使用して雑菌の繁殖を抑え腐敗リスクを低減させる、といったものもあった。本邦では、過去に輸入果実等のポストハーベスト問題が話題にされたこともあり、このような取り組みに対して必ずしも良いイメージを持たれないように感じるが、過度に行き過ぎた有機栽培信仰と同様に、その印象だけで決めすぎるべきではないと考える次第である。すなわち、農作物は新鮮なものを如何に早く消費者の手元に届けるか、が侵すべからずの至上命題であるかに言われている。一方で、では古くなってしまったものはすべからく廃棄をする、という点で莫大な廃棄量が発生してしまう、のがこの問題である。物流のスピードアップと温度管理が考え付く数少ない対処方法であるが、それだけでは限界があるのではないだろうか。目を転じて、水産物を見た場合に、まさに生鮮度が重要視されるが故に、魚の活締めの方法や氷砕水を使った保存、あるいは逆に熟成を前提とした処理、といったものがさまざま工夫されて適用されてきた。もちろん、昔のポストハーベストのように人体や環境に悪影響を残すような方法は取るべきではないが、農作物を(生産者の場所で最大限良い状態で)出荷したらそれで終わり、ではなく、消費者の口に入るまでを踏まえた手当ての余地はまだあって、それを行うことによって生産者自身の差別化ができるのではないかと考えた次第。